北本町 南本町
北下町 南下町地区
であった出来事
「大磯町史 8 別編 民俗(編集発行大磯町2001年)」
「大磯町史民俗調査報告書5(編集発行大磯町1997年他)」
「大磯町文化財調査報告書第27集むかしがたり(1987年初版)」より


南下町 照ヶ崎
9 海の大蛇 「ボラのヨーバミ」
ボラのヨーバミってね。ヨーって言うのは夕方のことなんですよ。もう薄暗くなりかかってきた時間帯ですね。そのときにね、ボラがね、もう真赤んなってね。もう、しまっちゃってんですね、海んなかでね。魚がね、まとまんとね、色が赤くなんですよ。ほんとね、そこんところへね、船がね、通んと、これがもうみんな船んなかへ、怖いからね、飛び込んできしゃうわけなんですね。ほいで、そのなかを通るときには、みんなね、伏せてね、ムシロかぶんか、あるいは、船はたいがいね、トバって言うのが入ってる。だ、それをかぶるかね、しんですよ。なぜそれをね、かぶるかって言うとね、そのボラをね、怖がらせてまとめてんのはね、ナガモノだって言いますね。わたしは実際に見たことがないんだから、それはもうはっきりとは言えませんけんどね。そのナガモノが、ボラをまとめて、しまらししゃってんですねえ。
だから、その上を船が通んと、ボラがみーんな飛び込んできしゃう。飛び込んでくるせったってよ、ちっとばかりのもんじゃねんだから。たいへんなボラが、何百いんだか何干いんだかわかんねえよなボラがね。そで、それを、そうふうにさしてんのは、ナガモノだって言うんですよ。蛇ですね。蛇だって、ちっちゃい蛇じゃなく大蛇でしょ、おそらく。そういうことを聞いたことありますね。
で、そのナガモノのね毒気をね、毒気っていうのは、その息ですよ。これを吹きかけられんと、まあ、危ないわけなんだな。だからそういうに伏せてね、ムシロカトバをかぶって、そん中をぬけてくる。そしんと、もうボラがそうとう入ってるね。(話者:南下町 加藤Kさん/大正3年生)「大磯町文化財調査報告書第27集」P60
11 北本町 人魂
朝の三時ごろ、船からオカを見ていたら、北本町あたりから人魂が出た。上に上がったところからずっと見ていたが、中村の川の向こう側に落ちた。大きな人魂で、まるくて、尻のあたりが細くなっていた。あとから聞いたらそこは墓のところだという。「ああ、あれが人魂っていうもんか」と思った。(話者:明治38年生、男性)「大磯町史民俗調査報告書5/P225」
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12 南下町 海から出た人魂
わたし、実家が大磯なんで、水飢饉のときに一人で水汲んでたの。 夜中に。そしたら海の中からね、ふわふわふわふわね、糸を引いて東光院に入った。お寺さんへ。気持ちのいいもんじゃないよ。海から。
※大磯の浜に井戸があり、そこで水を汲んでいたときに見た。 (西小磯 大正6年生まれ 女A)
「大磯町史民俗調査報告書5/P224」#kitsune #folkrore #キツネに化かされた #キツネ #口承文芸
南下町「仏さんの話1」
これはもう、ちょっとやな話なんだけんどね。海で仏さんにでっかすでしょ、浮いてらね。そんと、それを拾ってこればいいんだけんどね。ついね、仕事の関係か、あるいは何かの関係で拾わないでね、そのまま見過ごしちまっていうことありますわね。そしんと、いいことがないんですね。やっぱ気がとがめるっていうかね。けして死んだ仏が災難をぶつけるってことはないと思うだけんどさ、そういう言い伝えがありますね。だから必ずね、仏さんは拾ってやるもんだって言うのはね。一応ね、言い聞かしてやるんですね、拾う前にね。三回まわって、死体の。あれは左返しじゃなかったかな。そでね「拾ってあげてやるから、大漁授けろよ」って、ことわって。ま、死人に口なしって、あれじゃないけれどもね。そういうに言って、そしてあげるんですね。みんな、まあ、そうらしいね。ああいうものはね、ある程度は拾ってくれってふうに、人の目に触れるようなところへと、来るって言うんだからね。なかにはね、見過ごしてきた人もあるんですよね。まあ、家がよくないね。まあ、そのせえとばっかりは言えないけんどね。そいで、仮に泳ぎいって、まあ、うかうかして沈んじゃうでしょ。そんとね、三日めでなきゃ浮かないんですね。そんときに、すぐ浮けばだけんど、溺れていったん海に沈むでしょ。で、ひとっきりたつと浮くんですよね。だ、そのときに、人の目にかかんないでね、あげてもらえないと、また沈んじゃって三日めでないとあがんない。そういうもんらしいね。人間の執念なんか、それは怖いもんですよ。(南下町 真間正太郎さん/明治41年生)「大磯町文化財調査報告書第27集」P62
南下町 道に山が現れた話
わたしがね、車を運転しててね、あれは昭和のはじめだね、運転したらね、急に平らんとこでさ、 大きな千畳敷みてな山が現れただ。山がくんとこないとおもったな、平らんとこだから。 そいでしょうがねえ。狐がここらにいやしないかと思ってさ、寝ちゃったんだそこへ。三時間ぐらい寝たかな。そしたら目がさめたら、平らんとこだなあと、山がなくなったなあと。よくね、狐がとっ憑かれたとか、狸に化かされたとかいうけどね、錯覚おこされんことあんだ。(話者:南下町 真間正太郎さん/明治41年生)「大磯町文化財調査報告書第27集」P49
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「刺身を取られる」
刺身を重箱に入れて持って歩いていたら、それを狐がねらって、まわされてしまい、刺身を取られたという。生の魚を持っていると、狐にだまされてしまうが、マッチを持っていれば大丈夫だと言った。それで、魚を持ち歩くときには、親からかならずマッチを持たされた。(大正4年生、男性)「大磯町史民俗調査報告書5/P224」
南下町 「化身する話」
本当に化かされたことがあんのね。ほかの人にやっぱり化身するんでしょうね。化身して出てくるんでしょうね、化かされるってえのは。(話者:南下町 加藤Kさん/大正3年生)「大磯町文化財調査報告書第27集」P46
南下町 「狐憑きと犬」
狐がとっ憑いたっつってね、犬が来んとすぐ分かんだよ。なにかってね、犬が来るとね、倒れちゃうんだ。どこでも倒れちゃうんだ。犬がこけえらまわって歩く間じーっとしてんだ、とっ憑かれた人は。(話者:南下町 古内正太郎さん/明治41年生)「大磯町文化財調査報告書第27集」P53
南下町「船がぶつかりそうになった話1」
これはもう、ホタテ貝のことなんだ。まあ、夜の話なんですね。夜、夜釣りに行って、向こうからね、マストが三本で、帆をいっぱい風をはらんでくる船があるんだ。「あぶないー」と思ってね、自分の船めがけて来るから。あぶないと思ってたらね、それが消えちゃった。そんとね、そこにホタテ貝が泳いでたって言うんだね、タマですくったら。だけど、ホタテ貝っていうのはね、貝が泳ぐなんかってこと、ちょっとじられないでしょ。ところが、ホタテ貝は速いんだそうですよ。そうとう移動するらしいからね。そういうことも聞いたことありますね。まあ、そうとう昔の話でしょうけんどね。怪談だね。(話者:南下町 加藤Kさん/大正3年生)「大磯町文化財調査報告書第27集」P61
南下町「船がぶつかりそうになった話2」
昔は、伊豆の仁科ってとこあんだよ。仁科っていうと、向こっかだね。伊豆半島の向こっか。土肥の、もっと際の方かな、仁科ってとこあらあね。
あすこへ働きに行ったそうだね、昔ね。そんときに、やっぱり聞いた話だけんど、闇夜に槽をこいていたら、向こうからあかりをつけて、「ヤッサー、ヤッサー、ヤッサー、ヤッサー」へって船が来たそうだ。ほで、「ぶつかっちまー、ぶつかっちまー、危ねーどー」なんかせってるうちにパッと消えたと。へって言うことは、たまたま聞かされたね、親父から。で、親父がぶつかったわけじゃねんだけんどね。そういうことがあっただぞと、こうふうに言われたね。(話者:北下町 阿部川益吉さん/大正5年生)「大磯町文化財調査報告書第27集」P61
大磯 モモンガア
祖母からモモンガアというものが出ると聞かされた。人を食べてしまうという。(昭和2年生、女性)「大磯町史民俗調査報告書5/P224」
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大磯 「むるが怖い」
自分の母親の実家(中里)でよく「シシオオカミより雨のむるのが怖い」と言っていた。茅を刈らなければいかないというような話題が出たときなどに「おっかないから茅刈りに出ようよ」「シシオオカミより雨のむるのが怖いっていうから」 などと言っていたという。(大磯地区/昭和2年生、女性)「大磯町史民俗調査報告書5/P224」
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