黒岩 西久保
であった出来事
「大磯町史 8 別編 民俗(編集発行大磯町2001年)」
「大磯町史民俗調査報告書1〜3(編集発行大磯町1997年他)」
「大磯町史民俗調査報告書1 国府の民俗1 虫窪・黒岩・西久保地区」
「大磯町文化財調査報告書第27集むかしがたり(1987年初版)」
「資料室だよりvol.1」No.5/1986.1(大磯町立図書館郷土資料室 佐川和裕)」より


黒岩、窪畑、西畑、子ノ神、無行付近
37 七国峠あたりのムギのなかを歩く 1940年頃
昭和16~17年頃、弟の友人がだまされた。虫窪か黒岩の祭りのとき、娘がいたので、その後をつけてみようと言いだした。夜もおそいので皆がとめたが、友人はそれを振り切って後をつけていった。朝方、七国峠あたりで腰まであるムギのなかをズカズカ歩いていたのを、打越(二宮)の人が見つけて家まで送り届けてくれた。一晩中そこを歩き回っていたという。
(小早川マキさん大正9年生)「大磯町文化財調査報告書第27集/P48」
黒岩のキツネ 「狐に回される」1910年頃
昔のことでよ、古老の話だけんどよ○○○○さんがおもしろい話あったよ。(「ほお、○○○○さんが」)あの人がね、結局昔のことでよ、明治の末期ごろじゃなかったのかね。(「明治の終わりだんべな」)あの、郵便の集配人をしてただ。その人がね、集配した帰りが日が暮れちゃったんだね。それで結局ね、大きな藪の中を入っちゃってね、その中を何回も何回も回ったなんていう話聞いたがね、 結局なんだよ、狐に回されたなんだっていうのは、精神が錯乱しちゃってんだね。精神状態がすでにおかしいからこういうことになっちまうだよ。普通の者で正常だったらな、特に、夜の大きな山ん中に入っちまうとね、錯乱を起こすから、同じとこをこうぐるぐると回っちまうことになんだかね。(「結局どういうことになったのかなあ、 出てきたことは出てきたから」)やっぱり、ある程度休んだかなんかして、精神状態が落ち着いてからその山から出てきたじゃねえのかなあ。(*それは黒岩の人の話ですか) そうそう、それは実話だわな。そういうことを聞いただな。(黒岩、男、大正7年生まれ)「大磯町史民俗調査報告書1/P147」
注:括弧の中のことばはもう一人の話者のことば。また、 括弧がついているものは調査者の質問。
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狐にばかされる
やられた人もあんらしいわね。どんな場所でも畑でも、むやみに歩っちまうらしいんだね。 そして、何がなんだかわからないうちに、 そのへんで腰をおろしちまって、それから落ち着いたころに、うちへ帰るといったようなそういう話を聞いてますね。自分でやられたことはないから。(西久保、明治44年生まれ)「大磯町史民俗調査報告書1/P147」
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重箱を取られる
これは、実際に人から聞いた話だが、昔はよく重箱をふろしきに包んでもっていった場合には、おみやげにもらって帰ってきた。ところが途中で狐にばかされたか何かして、その品物を取られちゃったと、そういう話を聞いてますね。本当にやられた人がそういうんだ から。まあ、どんな状況で取られちまうんだか、それはわかんないですね。(西久保、明治44年生まれ)「大磯町史民俗調査報告書1/P147」
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狸が呼ぶ
鳴声をそう感じたとそういうことじゃなかろうかと思うんだけどね。やられたとか声をかけられたとか、そういうことは、まあ、聞いたことはあるけれど、実際にそういうことがあったのかなかったのか、ちょっとわかんないですよ。(西久保、明治44年生まれ) 「大磯町史民俗調査報告書1/P147」
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煙草を吸え
狐にばかされた、歩く道がボサになっちまってよくわからねえと、 そんなときには、まず、落ち着いて煙草でも吸って、落ち着いていれば、消えてくると、ということで煙草を吸えとそういうことらしいんだね。(西久保、明治44年生まれ)「大磯町史民俗調査報告書1/P147」
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イオウがきらい
狐に限らず、イオウのにおいがきらいだとかいうことも聞いたね。 (西久保、明治44年生まれ)
「大磯町史民俗調査報告書1/P148」
キツネッピ
キツネッピなんていうのは、わたしらは、見たことも、聞いたこともねえなあ。そういうことは聞いたこともないねえ。(黒岩、男、 大正7年生まれ)「大磯町史民俗調査報告書1/P148」
西久保のキツネ キツネッピ
キツネッピとか何とかいうのはね。あれはまあ、ほとんど暗くなってきてからのことだね。普通いえば、七時か八時ころでしょうね。 見えたっていっても、遠いっていっても、まあこのへんのことだけどね、山道のようなところに出るわけだね。今で考えてみるとね、 暗いからだれかが明かりをつけたかどうか、そのへんのことじゃないかと思うんだけどね。そういうことわからないからね。あれはキツネッピだとか何とか、そういったことを言い始めたでしょうよ。 今で考えればそういうふうに思えんのね。(*ぽつぽつとつくんですか)まあ、そういう場合もあるけども、数、たんとないんですね、 一つか二つくらいでね。(*大きな火ですか)いや、小さな火で。 (*ご自身で実際にみられたことは) まあ、それはね、見ることは見たけれど、はっきり記憶はないわね。(西久保、明治44年生まれ) 「大磯町史民俗調査報告書1/P148」
黒岩のイタチ イタチのいたずら(要旨)
イタチに、囲っておいた鶏を取られたことがあった。地面を掘っ て小屋の中に入り親鶏を取って食べた。地面を掘ってでも入ってくる。(黒岩、大正七年生まれ)「大磯町史民俗調査報告書1/P148」
ヤマカガシ
ヤマッカガシを○○ちゃんの畑で、ヌケガラ脱いでいるところを 最初っから見たわけよ。ずうっと出かかってんの見てよ。ヌケガラをしまっとくとうちが栄えるなんて。 デェジングウ(大神宮)さん に納めちゃった。今でもしまってある。(黒岩、大正7年生まれ) 「大磯町史民俗調査報告書1/P148」
入道
入道が出るという話はね、よく聞きました。聞いたけれどね、そういうのは出会ったことはないですよ。(中略)
夜道を歩いていて、用事があって夜帰ってくると、そういうときでないと、夜道は歩かないよね。そういう場合に、夜歩いたときに出ると。もし、出会った場合に、上を見んとだんだんでかくなっちまうから足元を見ろと。そういうことをいわれた。上を見ると、つまり顔の方を見てんとだんだんでっかくなっちまうから、足元を見ると小さくなっちまう。そんなことは言われたのは聞いたけどね。 (西久保、明治44年生まれ)「大磯町史民俗調査報告書1/P148」
※編者注:入道とは坊主頭の化け物か。
西久保「死んだ人がチョウに」
昭和44年10月、西久保の熊沢タツさんが亡くなり通夜にいったとき、オッサンがお経をあげている間、大きな蛾(ヤマンマユの蛾で,コナラの葉を食って成長し、真青な繭をつくる)が飛んできて、祭壇の所を回っていた。そばにいた人は、誰もはたいて追い払おうとしないで,そのままにしておいた。古正さんは、死んだ人が蝶々になって、飛んでくるという話を聞いていたので、これがおばあちゃんの魂ではないかと思ったという。(話者:虫窪 古正繁治さん/明治32年生まれ)「大磯町文化財調査報告書第19集 黒岩・西久保・虫窪地区」P82